ラテン語由来の言葉・成句
科学
フォッサマグナ
- Fossa magna「大きな溝」
中央地溝帯ともいう。古い地層にできた裂け目が火山活動などによって埋められてできた。日本を西南日本と東北日本に分ける。西縁は糸魚川静岡構造線(糸静線)。ナウマンが発見した。
マグニチュード
- magnus「大きさ」
地震の規模を表す尺度。マグニチュードが2増えると地震のエネルギーは1000倍になる。
考案したチャールズ・リヒター(Charles Richter, 1900~1985, 米, 地震学者)にちなんで、リヒタースケールとも。
in vitro/in vivo
- in vitro「試験管内で」
生物学の実験などで、試験管内など、人為的にコントロールされた環境下であることを意味する。
- in vivo「生体内で」
条件が人為的にコントロールされていない、生体内での環境であることを意味する。
プラナリア
- Planaria「平たい面」
扁形動物門有棒状体綱三岐腸目。日本語ではナミウズムシ。川などの淡水に生息。
再生能力が高く、半分に切ってもその切り口から体が再生する。プラナリアが脳以外でも神経の発達を促進する遺伝子はNou-darake(脳だらけ)とよばれる。
Planariaはplain「平原」やplane「平面」と同語源。
アノマロカリス
- Anomalocaris「奇妙なエビ」
古生代、カンブリア紀に生息した節足動物。
流線型の体にある多くの鰭で泳ぎ、頭部の前部付属肢で他の動物を捕まえ、円形の口で捕食する。三葉虫を食べていたというのは誤りとされる。
ユーグレナ
- eu glena「美しい瞳」
ミドリムシ属の学名。
鞭毛虫の一種。葉緑体を持ち全身が緑色だが、赤い眼点を持っていることが名前の由来。
ペリクルという細胞表皮によって、すじりもじり運動とよばれる独特の動きを行う。
栄養素が豊富であるため、サプリメントや食材として使われる。
Q.E.D.
- Quod Erat Demonstrandum「以上が証明されるべきことであった」
数学などの証明の末尾に置かれ、議論が終わったことを示す。また、∎(墓石記号)が代わりに使われることもある。墓石記号は初めて使った数学者のハルモス(Paul Halmos 1916~2006, ハンガリー)にちなみハルモス記号とも呼ばれる。
ユビキタス
- Ubiquitous「遍在」
もともとはキリスト教・ユダヤ教・イスラム教において、神が遍在することを表す単語であったが、
情報社会の現代において、コンピュータやインターネットが遍在することで、いつでも、どこでも、だれにでも豊かなサービスが提供される「ユビキタス社会」のことを指すようになった。
ウイルス
- virus「毒・毒液」
他の生物の細胞を利用して増殖する病原体。様々な病気を引き起こす。ウイルス自身は細胞を持たないため、生物であるかどうか諸説ある。
成句
驚くべき証明を見つけたが
- Cuius rei demonstrationem mirabilem sane detexi. Hanc marginis exiguitas non caperet.
- 「この定理に関して、私は真に驚くべき証明を見つけたが、それを書くにはこの余白は狭すぎる。」
フェルマーが、後にフェルマーの最終定理と呼ばれる問題について書き残したもの。カトリック帝国の実現を理想とし、フランスやオスマン帝国、プロテスタントと戦った。
技術は長く、人生は短い
- ars longa, vita brevis
古代ギリシャの医者、ヒポクラテスの言葉。
arsはtechneのラテン語訳で、artなどにも通じ「技術」のほかに「芸術」の意味もある。
メメント・モリ
- memento mori「死を忘れるなかれ」
古代ローマで、将軍の凱旋式のパレードで使われたとされる。
芸術では、ヴァニタス(vanitas、空虚)という、骸骨など死を意味するシンボルを取り入れた静物画が描かれた。
賽は投げられた
- Iacta alea est
カエサルがローマ内戦でルビコン川を渡るときに行ったとされる言葉。現代では、「もう後戻りできないので、やるしかない」という意味で使われる。
Gaius Iulius Caesar, 100B.C.~44B.C., 古代ローマ, 政治家・軍人・文筆家
英語ではジュリアス・シーザー。三頭政治の後、ローマ内戦に勝利し永久独裁官となった。皇帝を意味するKaiser(独)カイザー、царь(露)ツァーリ、および帝王切開の語源。有名な著書に「ガリア戦記」などがある。
このほかにも、「来た、見た、勝った(Veni, vidi, vici)」(ゼラの戦いでの戦勝報告)、「ブルータス、お前もか(Et tu Brute?)」(腹心の一人ブルータスに暗殺されたとき)など、多くの名言を残す。
一人はみんなのために、みんなは一人のために
- Unus pro omnibus, omnes pro uno
英語では「One for all, all for one」であり、こちらの方が有名。
デュマの小説「三銃士」ではダルタニャンと三銃士のモットーであり、スイスでは国の標語となっている。
もっとも古い記録は、三十年戦争の発端であるプラハ窓外放出事件で言われたものとされている。
プルス・ウルトラ
- Plus Ultra「もっと向こうへ」
もともとスペイン皇帝カルロス1世のモットーであり、そこからスペインの国の標語となった。
勝者に栄光あれ
- victoribus palmae
全国高等学校野球選手権大会(甲子園)の優勝旗に縫いとりされている言葉。
palmaeはもともと椰子や棕櫚(シュロ)のことを指すが、古代ギリシャでは競技大会の優勝者には棕櫚の葉を送って勝利を称えたことから、栄誉や栄光の意味も持つ。
巨人の肩の上に立つ
- nani gigantum umeris insidentes「巨人の肩の上に立つ小人」
「先人の積み重ねた発見に基づいて何かを新たに発見すること。」を指す。初出はシャルトルのベルナルドゥス(Bernardus Carnotensis, 12C, 仏, 哲学者)の著作だが、ニュートンがロバート・フックに宛てた手紙の一節にあるのが有名である。
学術文献検索サイト「Google Scholar」のトップページにも書かれている。
我思う、ゆえに我あり
- Cogito ergo sum
デカルトが著書「方法序説」で述べた言葉。すべてのものの存在を疑ったとしても(方法的懐疑)、それを疑う自分自身の存在は疑いようがない、という意味とされる。
その他
デウス・エクス・マキナ
劇の内容が錯綜して解決困難になったとき、混乱した状況を一気に解決する存在、およびその手法。例としてドラえもん、水戸黄門など。夢オチもその一種。
カラザ
- chalaza「あられ」
卵の中にある白いひも状の組織。卵黄を中央につなぎとめ、衝撃から守る役割がある。
メルカリ
- mercari「商いする」
フリーマーケットアプリ、およびそれを運営する企業。2013年に山田進太郎が創業。
また、メルクリウスは水星をつかさどり、マーキュリー(Mercury)の語源でもある。
アリバイ
- alius ibi「他の所に」
容疑者が事件当時現場にいなかったという不在証明のこと。
オーストラリア/アウストラロピテクス
- Australia
ラテン語で「南の地」を意味するterra australisに由来する。
- Australopithecus
ラテン語で「南の猿」を意味するaustalis(羅) pithecus(希)に由来する。
この両方に使われるaustralis(アウストラリス)はラテン語で「南の」という意味である。「北の」はseptentrionalである。
ちなみに、アウストラロピテクスを発見したのは、レイモンド・ダート(1893~1988, 豪)。
レクイエム
- Requiem「安息を」
死者の安息を願うミサのこと。カトリック教会でのみ行われる。また、そのミサで流れる聖歌のこと。
レクイエムには魂を鎮める意味はないため、「鎮魂曲」というのは正しい訳語ではない。
コンクラーベ
- Conclave
「鍵がかかった」という意味のcum claviに由来する、ローマ教皇の選挙。バチカンのシスティーナ礼拝堂において、120人の枢機卿(最高顧問)による投票が行われる(教皇自身が指名することはできない)。教皇の死後あるいは辞任後の15~20日の間に行われる。
デファクトスタンダード
- de facto standard
de factoはラテン語で「事実上の」を意味する。TCP/IP(通信規格)やQWERTY配列(キーボード)など。
対義語はde jure standard(デジュリスタンダード、定められた標準)である。
ア・プリオリ/ア・ポステリオリ
- a priori「より先のものから」
先天的・経験に先立つ・演繹的、などの意味がある。
- a posteriori「より後のものから」
後天的・経験を基にする・帰納的、などの意味がある。
タブラ・ラサ
- tabula rasa「文字を削って消した石板」
生まれたばかりの人間の心は真っ白な状態で、生得観念は無いということ。
ジョン・ロックが提唱。
ちなみに、tabula(石板、書字板)はタブレットtablet語源は。
アドリブ
- ad lib
「好きなように」を意味するad libitumの略。即興演奏、演劇・放送などで台本にない台詞を即興で挟むこと。
ボルボ
- volvo「私は回る」
スウェーデンの自動車メーカー。ガブリエルソン(Assar Gabrielsson, 1891~1962, スウェーデン, 実業家)、ラーソン(Gustav Larson, 1887~1968, スウェーデン, 技術者)らが創業。エンブレムはアイアンマークという。
チュートリアル
- tutorius「保護者」
もともとは「個別指導による教育方法のこと」を指した。転じて「物事を丁寧に説明するもの」、
さらに「機械やソフトウェア、ゲーム等を使い始める前に操作方法を解説するもの」を指すようになった。
エトセトラ
- et cetera「その他」
etc.などと略される。
ライバル
- rivalis「川を共同で使うもの」
同じ川を使うことから、水利権を巡り争う人々、転じて宿敵の意味となった。
アルバム
- album「白い板」
転じて、何かを張り付ける目的のものを指すようになり、そこから現在の意味が派生した。
ボーナス
- bonus「良い」