ドイツ語由来の言葉・成句
目次
ウムラウト
- 「母音の変化を示すためにつけられる2つの点¨」
- Umlaut
ドイツ語をはじめとするゲルマン系言語で見られるアクセント。a(アー), o(オー), u(ウー)の上につけて、ä(日本語に近い「エー」), ö(oとeの中間の「エー」), ü(口をuの形にして「イー」)となる。
アルバイト
- Arbeit「労働」
本来は現在のような「内職」「臨時の仕事」の意味はない。しかし、明治時代の学生が、家庭教師などの内職の隠語として使ったので、日本ではその意味で定着した。
ギプス
- gips「石膏」
焼石膏が水と反応して固まる()ことを利用して、骨折時の固定に用いる。
オランダの軍医マタイセン(Antonius Mathijsen, 1805~1878)が考案、日本では、尾崎豊太郎(1857~1920, 東京, 薬剤師・実業家)がはじめて取り入れた。
ゲレンデ
- Gelände「土地・地形」
ドイツではスキー以外の競技場でも使うが、日本ではスキー場に限って使われる。また、自動車のメルセデス・ベンツ・Gクラスは、オフロードを表すGeländewagenに由来してゲレンデと呼ばれる。
ユンカー
- Junker
東部ドイツの地主貴族のこと。18~19世紀のプロイセン王国、ドイツ帝国の支配階級であった。Junkerはもともと「貴族の若旦那」の意味。
ゲマインシャフト/ゲゼルシャフト
ドイツの社会学者テンニース(Ferdinand Tönnies, 1855~1936)が提唱した社会概念。
- Gemeinschaft
共同社会。血縁や地縁、感情的な繋がりなどによって構成される社会集団。家族や自治会などが挙げられる。
- Gesellschaft
利益集団。個人の特定の目標達成のために人為的につくられる社会集団。企業などが挙げられる。
ドッペルゲンガー
- doppelgänger「二重の歩く人」
自分自身の姿を自分で見る幻覚のこと。自己像幻視ともいう。
リンカーンや芥川龍之介が見たとされる。科学的には、脳の自己認識を司る部分の異常とされている。
エピゴーネン
- Epigonen
既存の優れたデザインなどを模倣・流用する、独創性のない者。すなわち、「パクリ」「二番煎じ」の意味。
もともとはギリシャ語で「後に生まれた者」の意味のepigonosが由来。
キッチュ
- kitsch
「俗悪なもの」「いんちきなもの」「安っぽいもの」を意味する。もともとは大衆文化を批判する意味で、グリーンバーグ(Clement Greenberg, 1909~1994)が用いたのが由来。
ファッション業界では、あえて悪趣味なものを取り入れる着こなし、というように肯定的な意味でも使われる。
シャーデンフロイデ
- schadenfreude「自分が手を下さずに他者が苦しむのを見聞きした時に生ずる、喜びや嬉しさなどの感情。」
すなわち、「他人の不幸は蜜の味」「メシウマ」の意味。また、ローマ人が闘技場で剣闘士の残酷な殺し合いを楽しんだことから、「ローマの休日」※とも言われる。schaden(不幸)+freude(喜び)からなる造語。
オードリー・ヘップバーン主演の同名の映画は、当時のアメリカであった赤狩り(マッカーシズム、共産主義者を徹底的に追及し追放する運動。Joseph McCarthy(1908~1957, 上院議員)にちなむ。)を皮肉する意味があったといわれる。
Audrey Hepburn(1929~1993, 英, 女優)。「ローマの休日」「ティファニーで朝食を」などで主演を務める。ユニセフ親善大使としての慈善活動も知られている。
ワンダーフォーゲル
- Wandervogel「渡り鳥」
山野を歩き、楽しみながら交流を深める活動。
カール・フィッシャー(Karl Fischer, 1881~1943, 独)が創始した。wander(彷徨う)+vogel(鳥)が語源。
ゲシュタルト
- Gestalt「形・形態」
そこから、部分から導くことのできない全体性のあるまとまりのことを指す。
ゲシュタルト崩壊とは、まとまりのある構造が失われることで、例えば、「漢字をじっと見つめていると、各部分がバラバラに見えて何の字かわからなくなる」などの現象である。
ツークツワンク
- zugzwang「動きの強制」
ツークツワンクとは、チェス用語で「自ら状況が悪化する手を指さなければいけない状況」を指す。
チェスではパスすることが禁じられているため。
転じて、「動きたくないが動かざるを得ない状況」のことも指す。
神は死んだ
- Gott ist tot
ニーチェの言葉。「神への信仰は無意味で、絶対的な視点は存在しなくなった」という考え方。著書「ツァラトゥストラはかく語りき」の中に登場する。これまで神や霊魂、精神が優先されてきたが、産業革命や科学の発展によって否定された、と説き、人々にキリスト教的価値観からの脱却を呼びかけた。
深淵をのぞく時
- Und wenn du lange in einen Abgrund blickst, blickt der Abgrund auch in dich hinein
- 「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。」
ニーチェの言葉。著書「善悪の彼岸」に登場し、「怪物と戦うものはその過程で自分自身も怪物にならないように気を付けなければならない(Wer mit Ungeheuern kämpft, mag zusehn, dass er nicht dabei zum Ungeheuer wird)」という一節に続く。「対象から情報を得ることには、望ましくない情報を受け取る危険性がある。」というように解釈される。「ミイラ取りがミイラになる」「行き過ぎた正義は悪」などのようにも解釈できるかもしれない。
シュトゥルム・ウント・ドラング
- Sturm und Drang「疾風怒濤」
18世紀後半にドイツで起こった革新的な文学運動。理性主義や合理主義に対抗し、感情や感受性に重きを置き、ロマン主義につながった。
代表的な作品に、ゲーテ「若きウェルテルの悩み」、シラー「群盗」などがある。