化学物質の製法の一覧。○○法などの名前があるもの。
ハーバー・ボッシュ法
- アンモニアの製法。
四酸化三鉄を主成分とした触媒を用いて、パスカル、400~600℃の条件で窒素と水素を合成する()。
これによって、農作物に窒素を供給する化学肥料を大量生産できるようになった。そのため、「水と石炭と空気からパンを作る方法」とも呼ばれ、20世紀の人口爆発を支えた。また、火薬の原料となる硝酸の大量生産も可能になった。
フリッツ・ハーバー(Fritz Haber, 1868~1934, 独, 化学者)、カール・ボッシュ(Carl Bosch, 1874~1940, 独, 化学者)よる。ハーバーは1918年、ボッシュは1931年ノーベル化学賞受賞。また、ハーバーは塩素ガスを用いた毒ガス兵器の発明でも知られる。
オストワルト法
- 硝酸の製法。
- 白金を触媒として、800度の高温でアンモニアから一酸化窒素を作る。
- 一酸化窒素をさらに酸化させて二酸化窒素にする。
- そして、二酸化窒素を水と反応させて硝酸を作る。
開発当初はにはアンモニアを大量生産する方法がなかったため、ハーバー・ボッシュ法が開発されるまでは注目されなかった。
ヴィルヘルム・オストヴァルト(Wilhelm Ostwald, 1853~1932, ラトビア→独, 化学者)による。触媒や化学平衡などの研究により1909年ノーベル化学賞受賞。
ソルベー法
- 炭酸ナトリウムの製法。
- 石灰石を熱分解し二酸化炭素を生成する。
- 塩化ナトリウムの飽和水溶液にアンモニアと二酸化炭素を通じ、炭酸水素ナトリウムを析出させる。
- 炭酸水素ナトリウムを熱分解し、炭酸ナトリウムを得る。
- 1で生じた酸化カルシウムを水と反応させて水酸化カルシウムを得る。
- 水酸化カルシウムと、2で生じた塩化アンモニウムを反応させ、アンモニアを得る(得られたアンモニアは2の工程に再利用される)。
アメリカや中国などで炭酸ナトリウムを含むトロナの鉱床が発見されたため現在は主流の製法ではないが、日本などトロナを産出しない国では未だに使われている。
エルネスト・ソルベー(Ernest Solvay, 1838~1922, ベルギー, 化学者・実業家)による。物理学を中心に話し合うソルベー会議を主催。死後の第5回会議にはアインシュタイン、マリー・キュリー、ニールス・ボーア、マックス・プランク、ハイゼンベルク、シュレーディンガーなど錚々たる物理学者が出席した。
ルブラン法
- 炭酸ナトリウムの製法。
- 食塩と硫酸を反応させて、硫酸ナトリウムを生成する。
- 硫酸ナトリウムを炭素で還元して硫化ナトリウムを得る。
- 硫酸ナトリウムと炭酸カルシウムを反応させて炭酸ナトリウムを得る。
副生物の塩化水素や硫化カルシウムが環境汚染の原因となることや、またソルベー法の発達により衰退。
ニコラ・ルブラン(Nicolas Leblanc, 1742~1806, 仏, 化学者・医師)にちなむ。
バイヤー法
- アルミナ(酸化アルミニウム)の製法。
- ボーキサイトを水酸化ナトリウム溶液に溶かす。
- アルミニウムは両性金属であるため溶解するので、不純物を取り除く。
- 水で希釈し水酸化アルミニウムを沈殿させる。
- 水酸化アルミニウムを加熱し、アルミナ(酸化アルミニウム)を得る。
カール・ヨーゼフ・バイヤー(Carl Josef Bayer, 1847~1904, 独, 化学者)による。
ホール・エルー法
- アルミニウムの製法
アルミナを融解させてアルミニウムを得る(溶融塩電解)。
アルミナの融点は2000℃以上であるため、融点が約1000℃の氷晶石に溶かすことで、融点を下げ、溶融塩電解しやすくする。
陰極:
陽極:
チャールズ・マーティン・ホール(Charles Martin Hal, 1863~1914, 米, 化学者)とポール・エルー(Paul Heroult, 1863~1914, 仏, 化学者)による。