○○効果の一覧。科学から心理学、社会学まで。
自然科学
ムペンバ効果
- 「ある特定の条件下では、お湯が水よりも早く凍ることがある。」
物理学。必ずしも起こるとは限らない。原因には諸説ある。エラスト・ムペンバ(Erast B. Mpemba, 1950~2020, タンザニア)が学生時代に発見した。
ストループ効果
- 「文字色と意味のように同時に目にする二つの情報が干渉しあい、判断を遅らせる。」
心理学。(例)赤、青、緑、黄。脳トレなどに使われる。ジョン・ストループ(John Stroop, 1897~1973, 米, 心理学者)による。
ゼーベック効果
- 「異なる2種類の金属に温度差を設けると電圧が発生する。」
熱力学・電磁気学。トーマス・ゼーベック(Thomas Seebeck, 1770~1832, エストニア, 物理学者)による。
ペルチェ効果
- 「異なる2種類の金属に電流を流すと温度差が発生する。」
熱力学・電磁気学。ゼーベック効果の逆。ジャン=シャルル・ペルチェ(Jean-Charles Peltier, 1785~1845, 仏, 物理学者)による。
トムソン効果
- 「異なる2種類の金属に電流を流すと熱の発生や吸収が起こる。」
熱力学・電磁気学。ウィリアム・トムソン(William Thomson1824~1907, 英, 物理学者)による。Thomsonはケルビン卿(Lord Kelvin)として知られ、絶対温度の概念を導入した人物である。
ロータス効果
- 「表面の微細構造によって、水が表面張力で丸まって撥水・自浄作用をもつ。」
材料工学。lotusは蓮の意味で、蓮の葉の微細構造をもとにしている(バイオミメティクス)。傘やヨーグルトの蓋の裏などに応用されている。
マグヌス効果
- 「回転しながら進む物体には、進行方向に垂直な揚力がはたらく。」
流体力学。野球などにおいて変化球用いられている。また、ゴルフボールにはたらくマグヌス効果を維持するためにあるのがディンプルである。Heinrich Magnus(1802~1870独、科学者)による。
ジャイロ効果
- 「物体が自転運動をすると、姿勢を乱されにくくなる。」
力学。こまや自転車、地球の自転などにおいてこの効果が表れる。
バタフライ効果
- 「非常に些細で小さなことが、大きな出来事の要因となること。」
もともとはカオス理論における、「力学モデルに小さな変化を与えると、結果が大きく変わってくる。」ということをさしていた。その研究者であるローレンツ(Edward Lorenz 1917~2008米、気象学者)の講演名、「ブラジルでの蝶の羽ばたきはテキサスでトルネードを引き起こすか」に由来する。
パウリ効果
- 「物理学者ヴォルフガング・パウリが近くに寄っただけで実験機材が壊れる。」
ジョーク。ヴォルフガング・パウリ(Wolfgang Pauli, 1900~1958, スイス)は、量子のスピンや排他原理の発見などの業績のある物理学者だったが、実験が下手で装置を頻繁に壊していたため生まれたジョーク。
コンプトン効果
物理学。アーサー・コンプトン(Arthur Compton, 1892~1960, 米, 物理学者)による。
モーセ効果
- 「強力な磁石に近づけると、水が遠ざかる。」
水が反磁性をもつことに起因する。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の預言者。古代イスラエルの民族指導者。エジプトから脱出中にファラオの軍に追い詰められたとき、海を割ってユダヤの民と共に逃れたことに由来する。
マイスナー効果
- 「磁場が超伝導体内部に侵入しなくなる。」
超伝導体の重要な性質であり、これを用いた磁気浮上によるリニアモーターカーが研究されている。
ヴァルター・マイスナー(Walther Meissner, 1882~1974, 独, 物理学者)および助手のローベルト・オクセンフェルト(Robert Ochsenfeld, 1901~1993, 独, 物理学者)が発見した。
心理学
ピグマリオン効果
- 「周囲の期待が高いと、パフォーマンスが上昇する。」
心理学。提唱者のロバート・ローゼンタール(Robert Rosenthal, 1933~ , 米, 心理学者)にちなみ「ローゼンタール効果」ともいう。自身の作った彫像に恋したギリシャ神話のピュグマリオン王に由来する。
マタイ効果
- 「条件に恵まれた人は優れた業績を上げる。」
社会学。すなわち「金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏に」ということ。聖書:マタイによる福音書の一節「・・・持っている人は与えられて・・・持っていない人は、持っているものまで取り上げられるだろう」に由来する。ロバート・マートン(Robert Merton, 1910~2003, 米, 社会学者)が提唱。
ヴェブレン効果
- 「商品の価格が高いほど需要が増加する。」
心理学・行動経済学。高級品やブランドものを買って見せびらかしたくなる自己顕示欲が背景にあるとされる。ソースティン・ヴェブレン(Thorstein Veblen, 1857~1929, 米, 経済学者, 社会学者)による。
ディドロ効果
- 「新しいものを一つ取り入れると、統一したくなる心理効果。」
心理学・行動経済学。部屋の装飾を統一したくなったり、小物などのラインナップを揃えたくなったりする心理効果。ドゥニ・ディドロ(Denis Diderot, 1713~1784, 仏, 哲学者・作家, 百科全書を編纂)の著作による。
ツァイガルニク効果
- 「達成した事柄よりも、中断したり挫折したりした事柄のほうがよく記憶に残る。」
心理学。ブルーマ・ツァイガルニク(Bluma Zeigarnik, 1901~1988, ソ, 心理学者・精神科医)およびクルト・レヴィン(Kurt Lewin, 1890~1947, 独, 心理学者, 「境界人」を提唱)による。
リンゲルマン効果
- 「共同作業の際に無意識に手を抜いてしまう心理効果。」
心理学。マクシミリアン・リンゲルマン(Maximilien Ringelmann, 1861~1931, 仏, 農学者)による。
アナウンスメント効果
- 「選挙結果の事前予測が投票行動に影響を与える。」
群集心理学。バンドワゴン効果により、有利と予測された候補者に票が集まることや、アンダードッグ効果により、不利と予測された候補者に、同情票が集まって票数を伸ばすことがある。
クレショフ効果
- 「複数の画像を無意識に関連付けてしまう心理効果。」
認知バイアス。例えば、赤ちゃんの映像の後に女性の映像を見せると、女性は赤ちゃんの母親だという印象をもつ。レフ・クレショフ(Lev Kuleshov, 1899~1970, ソ, 映画監督)による。
プライミング効果
- 「先に与えられた情報が後に得た情報に影響を及ぼす。」
認知バイアス。例えば、「ピザ」と10回言った後に「ひじ」を「ひざ」と言ってしまう(10回クイズ)。primingは「前もって教える」という意味。
アンカリング効果
- 「先に与えられた数値が後に得た数値の判断に影響を及ぼす。」
認知バイアス。例えば、990万円の品物を見た後に500万円の品物を見ると安く感じる。ancoringとは錨(いかり)でつなぎとめること。
ブレークイーブン効果
- 「損失をすると、損得ゼロの状態に戻そうとする。」
心理学。投資家が失敗する原因になりやすい。対義語はスネークバイト効果。
スネークバイト効果
- 「損失をすると、さらなる損失を恐れて早々に退場すること。」
心理学。対義語はブレークイーブン効果。
カリギュラ効果
- 「禁止されるほどそれをやりたくなる。」
ローマ皇帝カリグラ(Caligula)をモデルにした映画「カリギュラ」が過激な内容だったため、放映禁止する映画館が多かったが、かえって世間の注目を引いたことに由来する。
ハロー効果
- 「何かを評価する際、目立った特徴に引きずられて対象の評価が変わること。」
心理学。認知バイアスの一種。日本語では「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」「あばたもえくぼ」が近い。ハロー(halo)とは仏や聖人の背後に描かれる光輪(光背)のこと。
ダニング=クルーガー効果
- 「能力や知識が低い人ほど自分のことを過大評価する心理効果。」
認知バイアスの一種。対偶としてソクラテスの「無知の知」や、孔子の「論語」の一説「知之為知之、不知為不知。是知也。」などがある。
デイビッド・ダニング(David Dunning, 米, 心理学者)とジャスティン・クルーガー(Justin Kruger, 米, 心理学者)による。
バーナム効果
- 「実際には誰にでも当てはまる内容なのに、自分だけに当てはまるかのように感じる心理効果。」
占いや心理テストなどに使われる。アメリカの興行師P. T. バーナム(Phineas Taylor Barnum)に由来する。実験を行い実証したバートラム・フォア(Bertram Forer, 1914~2000, 米, 心理学者)にちなみフォアラー効果ともいう。
コンコルド効果
- 「投資を続けることが損失につながるとわかっていても、それまでの投資を惜しんで投資をやめられなくなること。」
超音速旅客機コンコルドは、開発時点ですでに採算が取れないことが予想されていたにもかかわらず、そのまま開発、就航し、商業的失敗につながったことから。
ブーバ/キキ効果
- 「音声と視覚的な形状には関連がある。」
丸い曲線からなる図形と、ギザギザした直線からなる図形を見せて、どちらがブーバでどちらがキキを表すかと質問すると、ほぼすべての人が丸いほうをブーバ、ギザギザしたほうをキキと答える。年齢、性別、母語に関係なく同じ結果が現れる。
ヴォルフガング・ケーラー(Wolfgang Köhler , 1887~1967, 独, 心理学者)が報告し、V.S.ラマチャンドラン(V. S. Ramachandran, 1951~ , 印, 心理学者)
その他
ストライサンド効果
- 「公開された情報を隠蔽したり削除したりしようとすると、かえってその情報が拡散されてしまう。」
アメリカの歌手・女優であるバーブラ・ストライサンドが、自分の豪邸が映った画像の公開差し止めの裁判を起こしたが、かえって世間の注目を集めてしまったことに由来する。