○○の法則の一覧。
自然科学:生物学
ベルクマンの法則
- 「恒温動物において、寒い地域に生息する個体ほど体が大きい。」
生物学・動物学。例として、マレーグマ(低緯度)約120cm<ツキノワグマ(中緯度)約160cm<ホッキョクグマ(高緯度)約200cm。
クリスティアン・ベルクマン(Cristian Bergmann, 1814~1865, 独, 動物学者)による。
アレンの法則
- 「恒温動物において、寒い地域に生息する個体ほど突出した器官が小さい。」
生物学・動物学。
ジョエル・アサフ・アレン(Joel Asaph Allen, 1838~1921, 米, 動物学者・鳥類学者)。アメリカ鳥学会の初代会長でもある。
グロージャーの法則
- 「恒温動物において、湿った地域に生息する個体ほど体表の色が濃い。」
生物学・動物学。コンスタンティン・ヴィルヘルム・ランベルト・グロージャー(Constantin Wilhelm Lambert Gloger, 1803~1863, プロイセン, 鳥類学者) による。
シャルガフの規則
- 「DNAを構成する4つの塩基のうち、アデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)の量は等しい」
生物学。経験則。ここから、DNAはAとT、GとCの塩基対から構成されることがわかり、二重らせん構造の発見につながった。
エルヴィン・シャルガフ(Erwin Chargaff, 1905~2002, 墺→米, 生化学者)による。
自然科学・物理学
熱力学法則
第零法則
- 「物体Aと物体B、物体Bと物体Cが熱平衡なら、物体Aと物体Cも熱平衡である。」
熱平衡とは2つの物体間で熱の移動がない状態のことである。
第一法則
「エネルギーの総和は変化しない。」
いわゆるエネルギー保存則である。
フックの法則
- 「ばねの弾性力は伸び縮みの長さに比例する。」
物理学。(:弾性力 :ばね定数 :ばねの伸び縮み)であらわされる。
ロバート・フック(Robert Hooke, 1635~1703, 英, 科学者)
顕微鏡を自作しさまざまな観察を行い、「顕微鏡図譜」(Micrographia)を著した。コルクを観察し、細胞を発見、命名した。ニュートンとは犬猿の仲だった。
シュテファン=ボルツマンの法則
- 「黒体から放出されるエネルギー量は、温度の4乗に比例する。」
物理学・熱力学。 :放射発散度、:温度で表される。はシュテファン=ボルツマン定数であり、値は。ヨーゼフ・シュテファン(Joseph Stefan, 1835~1893, 墺, 物理学者・哲学者) とルートヴィッヒ・ボルツマン(Ludwig Boltzmann, 1844~1906, 墺, 物理学者)による。
ケプラーの法則
- 「惑星は太陽を焦点の一つとする楕円軌道上を動く。」
- 「惑星と太陽を結ぶ線分が単位時間に描く面積は一定である。」
- 「惑星の公転周期の2乗は、軌道の半径の3乗に比例する。」
天文学・天体物理学。特に第三法則が有名。ヨハネス・ケプラー(Johannes Kepler, 1571~1630, 独, 物理学者・数学者・哲学者)による。彼が考えた「面心立方構造が最密か?」という問題はケプラー予想と呼ばれる。NASAの探査機の名前にもなっている。
ハッブル=ルメートルの法則
- 「宇宙のどの方向にある銀河も銀河系から遠ざかり、その速度は銀河までの距離に比例する。」
天文学。(:後退速度 :ハッブル定数 :銀河までの距離)で表される。このことから、宇宙が膨張し、銀河の光がドップラー効果により赤方偏移していることがわかる。エドウィン・ハッブル(Edwin Hubble, 1889~1953, 米, 天文学者)が1929年に発表したが、1927ごろにすでに発見していたジョルジュ・ルメートル(George Lemaître, 1894~1966, ベルギー, 天文学者)の功績をたたえて2018年よりこの名称となった。ハッブルはNASAの宇宙望遠鏡の名前となっている。
フレミングの法則
- フレミングの左手の法則:「左手の中指、人差し指、親指を立て、直交の状態にすると、それぞれの指す向きは電流、磁場、導体が受ける力の向きに等しくなる。」
- フレミングの右手の法則:「右手の中指、人差し指、親指を立て、直交の状態にすると、それぞれの指す向きは、電磁誘導における電流、磁場、導体が受ける力の向きに等しくなる。」
物理学・電磁気学。ジョン・フレミング(John Fleming, 1849~1945, 英, エンジニア・物理学者)。ペニシリンの発見者とは別人。
キルヒホッフの法則
- 「電気回路の任意の分岐点について、そこに流れ込む電流の総和は、流れ出る電流の総和に等しい。」
グスタフ・キルヒホッフ(Gustav Kirchhoff, 1824~1887, 独, 物理学者)
モーズリーの法則
物理学・原子物理学。
ヘンリー・モーズリー(Henry Moseley, 1887~1915, 英, 物理学者)。彼はこの法則の発見により、将来のノーベル賞受賞は確実とされていたが、第一次世界大戦ガリポリの戦いにおいて戦死した。
自然科学:化学
ヘスの法則
- 「化学反応において発生または吸収される熱量は、反応の経路によらず一定である。」
化学。「総熱量不変の法則」ともいう。
ジェルマン・アンリ・ヘス(Germain Henri Hess, 1802~1850, スイス→ロシア, 化学者)による。
ボイルの法則
- 「温度が一定のとき、気体の体積は圧力に反比例する。」
化学・物理学。(または)であらわされる(:圧力 :体積 :定数)。
ロバート・ボイル(Robert Boyle, 1627~1691, 英, 科学者)による。
マリオットの法則とも。
シャルルの法則
- 「圧力が一定のとき、気体の体積は温度に比例する。」
化学・物理学。(または)であらわされる(:温度 :体積 :定数)。
ジャック・シャルル(Jacques Charles, 1746~1823, 仏, 科学者)。モンゴルフィエ兄弟に倣って、世界で初めて水素を用いた気球で飛行した。
ヘンリーの法則
- 「温度が一定の時、一定量の溶液に溶ける気体の質量は、その気体の圧力に比例する」
化学・物理学。
ウィリアム・ヘンリー(William Henry, 1775~1836, 英, 科学者)。彼の書いた「Epitome of Chemistry」を、江戸時代に宇田川榕庵が翻訳し、「舎密開宗」(せいみかいそう)として出版した。
アボガドロの法則
- 「全ての気体は、同温、同圧のとき、同体積に同数の分子をふくむ。」
化学。
アメデオ・アボガドロ(Amedeo Avogadro, 1776~1856, 伊, 科学者)。アボガドロ定数()は、彼にちなんでジャン・ペラン(Jean Perrin, 1870~1942, 仏, 化学者)によって名付けられた。
ドルトンの法則
- 「混合気体の全圧は、各成分気体の分圧に等しい。」
化学。
ジョン・ドルトン(John Dalton, 1766~1844, 英, 科学者)。自らが色覚異常であることを発見したことで、色覚異常のことをドルトニズムというようになった。
ゲイ=リュサックの法則
- 「圧力が一定のとき、気体の体積は温度に比例する。」
- 「化学反応に気体がかかわるとき、それらの気体の体積の間に簡単な整数比が成り立つ。」
第1法則はシャルルの法則と等しい。第2法則は気体反応の法則ともよばれる。
ジョセフ・ゲイ=リュサック(Joseph Gay Lusaac, 1778~1850, 仏, 科学者)。気球を使って気象観測を行った。ピペットやビュレットなどの言葉を考案した。
ファントホッフの法則
- 「希薄溶液の浸透圧は、温度とモル濃度に比例する。」
物理化学。ヤコブス・ヘンリクス・ファント・ホッフ(Jacobus Henricus van t’ Hoff,
1852~1911, 蘭, 化学者)による。
シュルツ・ハーディの法則
- 「疎水コロイドを凝析させるとき、反対の符号を持つイオンの価数が大きいほど、凝集力が大きくなる」
化学。
ハンス・シュルツ(Hans Schulze, 1853~1892, 独, 化学者)とウィリアム・ベイト・ハーディ(William Bate Hardy, 1864~1934, 英, 化学者)による。
マルコフニコフ則
- 「アルケンの付加反応において、より多く水素が付いている炭素原子に水素が結合する」
化学。
例えば、プロペンに水を付加する反応では、にがついた2-プロパノールが主生成物、にがついた1-プロパノールが副生成物となる。
ウラジーミル・マルコフニコフ(Vladimir Markovnikov, 1838~1904, 露, 化学者)による。
自然科学:その他
ボイス・バロットの法則
- 「北半球において、風を背にして立つと左手の方向に低気圧の中心がある。」
気象学。クリストフォルス・ボイス・バロット(Christophorus Buys Ballot, 1817~1890蘭, 気象学者)による。
ティティウス=ボーデの法則
- 「太陽系の惑星と太陽との距離は簡単な数列で表される。」
天文学。 で表される。のとき水星、のとき金星、のとき地球⋯というように距離に近似するが、海王星や冥王星の発見によりただの偶然であったことが分かった。ヨハン・ダニエル・ティティウス(Johann Daniel Titius, 1729~1796, 独, 天文学者)とヨハン・ボーデ(Johann Bode, 1747~1826, 独, 天文学者)による。ボーデは天王星の名付け親である。
メトカーフの法則
- 「ネットワーク通信の価値は、接続するユーザー数の2乗に比例する。」
情報理論。であり、が大きくなるとに近づく。この法則はネットビジネスにおける一人勝ち現象の原因にもなっている。
ロバート・メトカーフ(Robert Metcalfe, 1946~ , 米, 電気工学者)。彼はイーサネットの発明者。
ハインリッヒの法則
- 「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常がある。」
安全工学・人間工学。経験則。「ヒヤリ・ハットの法則」とも呼ばれる。
ハーバート・ハインリッヒ(Herbert William Heinrich, 1886~1962, 米, 保険会社社員)による。
スティグラーの法則
- 「科学的発見に第一発見者の名前がつくことはない。」
経験則。例として、ハレー彗星、ハッブルの法則、ガウス分布などがある。スティーブン・スティグラー(Steven Stigler, 1941~ , 米, 統計学者)による。また、スティグラーの法則自身も、第一発見者はロバート・マートンであり、この法則を満たしているとされる。
ロボット工学三原則
- 1「ロボットは、人間に危害を加えてはならない」
- 2「ロボットは、1に反しない限り、人間の命令に服従しなければならない」
- 3「ロボットは、1および2に反しない限り、自己を守らなければならない」
アイザック・アシモフ(Isaac Asumov, 1920~1992, ソ→米, SF作家・生化学者, 代表作に「われはロボット」「ファウンデーション」)が提唱。現実のロボット工学にも影響を与えた。
ベンフォードの法則
- 「自然界に出てくる多くの数値の最初の桁の数字は、特定の分布になっている。」
統計学。最初の桁が1になる確率が最も高く、約30%になる。そのあと2、3、4、…と順に出現確率が低くなる。
データの改竄や選挙不正を暴くのに用いられる。
フランク・ベンフォード(Frank Benford, 1883~1948, 米, 物理学者・電気工学者)による。
社会科学
ランチェスターの法則
- 「古典的な近接戦において、戦闘の経過による人数の消耗は一次式で表される。」
- 「近代的な戦闘において、戦闘の経過による人数の消耗は二次式で表される。」
軍事学・経営学。ここから、強者はできるだけ兵力を残せるように第2法則を適用できるようにし、弱者はできるだけ少ない兵力で戦うため第1法則を適用できるようにする。これを経営学に応用したランチェスター経営戦略はフォルクワーゲンなどで用いられた。フレデリック・ランチェスター(Frederick Lanchester, 1868~1946, 英, エンジニア)による。
グレシャムの法則
- 「悪貨は良貨を駆逐する。」
経済学。金本位制の場合。同様に、質の悪い品物ばかりが出回ることをレモン市場という。
トーマス・グレシャム(Thomas Gresham, 1519~1579, 英, 財政家・王室金融代理人)による。
セーの法則
- 「供給は自ら需要を作り出す。」
経済学。販路法則ともいう。同時に失業も存在しないことを意味するが、貯蓄について考慮されておらず、第一次世界大戦後の世界恐慌などでは成り立たなくなっている。
ジャン=バティスト・セー(Jean Baptiste Say, 1767~1832, 仏, 経済学者・実業家)。アダム・スミスを敬愛していた。
ペティ=クラークの法則
経済学。
ウィリアム・ペティ(William Petty, 1623~1687, 英, 医師・経済学者)とコリン・クラーク(Colin Grant Clark, 1905~1989, 英, 経済学者)。クラークが産業を三種類に分類した。
エンゲルの法則
- 「所得が多くなるほど、家計に占める飲食費の割合が小さくなる。」
経済学・統計学。ここから、家計に占める飲食費の割合のことをエンゲル係数という。
エルネスト・エンゲル(Ernest Engel, 1821~1896, 独, 経済学者)による。
ダグラス・有沢の法則
- 「世帯主の収入と配偶者の就業率には負の相関関係がある。」
ポール・ダグラス(Paul Douglas, 1862~1976, 米, 経済学者・政治家)と有沢広巳(1896~1988, 経済学者・統計学者)による。
パレートの法則
- 「全体の数値の8割は、全体を構成する要素の2割が生み出している。」
経験則。80:20の法則とも呼ばれる。
ヴィルフレド・パレート(Vilfredo Preto, 1848~1923, 伊, 経済学者・社会学者)による。
ピーターの法則
- 「能力主義の階級社会では、有能な人物はその能力が追いつかず無能さが露呈するまで昇進するため、組織内は無能な人間であふれかえる。」
社会学。ローレンス・ピーター(Laurence Peter, 1919~1990, 米)による。
心理学
ジャネーの法則
- 「人が感じる時間の長さは、その時の年齢に反比例する。」
心理学。5歳の人には1年間は人生の1/5、50歳の人には1年間は人生の1/50にあたることから。
ポール・ジャネー(Paul Janet, 1823~1899, 仏, 哲学者)による。
ヤーキーズ=ドットソンの法則
- 「高すぎず低すぎない適切な緊張状態の下で、人は最適なパフォーマンスを発揮できる。」
心理学。
ロバート・ヤーキーズ(Robert Yerkes, 1876~1956, 米, 心理学者)とジョン・ディリンガム・ドットソン(John Dillingham Dodson, 1879~1955, 米, 心理学者)による。
パーキンソンの法則
- 「仕事の量は、与えられた時間を全て費やすまで膨張する。」
- 「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する。」
第一法則の例として、「早めに夏休みの宿題を始めたのに八月に仕上がる」、第二法則の例として、「収入が増えたのにその分多く使って貯金が増えない」などがある。また、「役人の数は仕事の量とは無関係に増え続ける」という形でも知られる。
シリル・ノースコート・パーキンソン(Cyril Northcote Parkinson, 1909~1993, 英, 歴史学者・政治学者)による。
スティンザーの法則
複数人が1つのテーブルに座るとき、
- 「反対意見を持つ人は相手の正面に座る。」
- 「賛成意見のあとには反対意見が出やすい。」
- 「議長役のリーダーシップが弱いと正面の人との私語が増え、強いと隣の人との私語が増える。」
スティンザー効果ともいう。
リボーの法則
- 「記憶は新しいものから失われ、古いものは比較的安定している。」
認知症で記憶が失われていく過程も同様である。
テオドール・リボー(Théodule Ribot, 1839~1916, 仏, 心理学者)による。
エメットの法則
- 「仕事を先延ばしにすることは、すぐに片付けることよりも倍の時間とエネルギーを要する。」
リタ・エメット(Rita Emmett)による。
その他
カニンガムの法則
- 「ネット上で正しい答えを得る最善の方法は、質問することではなく、間違った答えを書くことである。」
経験則。間違った情報を訂正したくなる心理を利用している。
ウォード・カニンガム(Ward Cunningham, 1949~ , 米, プログラマー)。Wikiの発明者。
スタージョンの法則
- 「常に絶対的にそうであるものは存在しない。」
- 「あらゆるものの90%はカスである。」
シオドア・スタージョン(Theodore Sturgeon, 1918~1985, 米, SF作家)。代表作に「人間以上」など。
クラークの三法則
- 1「高名で年配の科学者が可能であるといった場合、その主張は正しい」
- 2「物事の限界を発見する方法は、限界を超えることである」
- 3「十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない」
アーサー・C・クラーク(Arthur Charles Clarke, 1917~2008, 英, SF作家・科学解説者, 代表作に「2001年宇宙の旅」)が提唱。
ダグラス・アダムズの法則
- 「人間は、自分が生まれた時にすでに存在したテクノロジーを、自然な世界の一部と感じる。」
- 「15歳から35歳の間に発明されたテクノロジーは新しくエキサイティングなものと感じられる。」
- 「35歳以降になって発明されたテクノロジーは自然に反するものと感じられる。」
ダグラス・アダムス(Douglas Adams, 1952~2001, 英, 作家, 代表作に「銀河ヒッチハイク・ガイド」)が提唱。
ヒュームの法則
- 「「~である」という命題から、「~すべき」という命題は導き出せない。」
ヒュームのギロチンとも。
デイビッド・ヒューム(David Hume, 1711~1776, スコットランド, 啓蒙哲学者)